脱毛症(だつもうしょう)、または抜け毛(ぬけげ)とは、本人が生えることを期待していた毛髪(主に過去に生えていた箇所の毛)が生えなくなった状態、あるいは抜けてしまった状態のことである。通俗的には禿げ(はげ)と言われる。生理学的には、ヒトの頭髪の形状は年齢や個々人の個性により多様であり、こうあらねばならないという正解があるわけではない。医学的には、毛密度が生来の50%以下に低下した場合を指し、他人から見ても目立つ場合が多いとされる。最近では女性のレーザー脱毛と混同されることから、薄毛と言われる事が多い。

男性型脱毛症

男性の大半は加齢と共に多少なりとも前頭部と頭頂部の毛量が減少していく。そのため、これは正常な生理的現象であるとし、病気としては扱われない。後述するような医学的対処も行われているが、医薬品は生活改善薬の一種であり、外科的手法は美容外科手術の一種である。病気の治療ではないので健康保険は適用されない。しかし、男性型脱毛症の大部分を占めるAGAはフィナステリドやデュタステリドを内服する事で進行を止める事が可能になった。その場合自由診療であり、皮膚科、美容外科などの医療機関のみが取り扱っている。

AGAの原因は酵素5a-リダクターゼの働きによって男性ホルモンである「テストステロン」から生成されたDHT(ジヒドロ・テストステロン)という物質が原因と考えられている。このDHTが毛乳頭細胞に存在する男性ホルモン受容体(レセプター)と結びつくと、髪の毛の正常なサイクルを狂わせてしまう。5α-リダクターゼにはタイプIとタイプIIの二種類が存在し、それぞれI型DHTとII型DHTを生成する。AGAが出現する前頭部と頭頂部にはタイプIIの5α-リダクターゼが主に存在し、AGAが出現しにくい後頭部と側頭部にはタイプIが多く存在している。通常、生えた髪の毛は2年~6年は維持されるはず(その後抜け毛となり、また生え変わる)であるが、DHTタイプIIが標的器官である前頭部と頭頂部の髪の毛の毛乳頭細胞にある男性ホルモンレセプターに接続すると脱毛に関するタンパクを生成し、一気に毛髪の寿命を縮め、数ヶ月から1年で成長が止まってしまう。そのタンパク質の代表的なものがTGF-β1と考えられている。TGF-β1は細胞の働きを調節する内因性生理活性蛋白質でサイトカインの一種である。TGF-β1が毛包細胞に存在するTGF-β1レセプターに結合すると毛包細胞の細胞自然死(アポトーシス)が起こり、毛周期が退行期へ誘導されてしまう。5α-リダクターゼタイプIIの阻害薬がフィナステリドであり、5α-リダクターゼタイプIIとタイプIの両方を阻害するのがデュタステリドである。これらの薬品はAGAの進行を防ぐ効果がある。これは自毛植毛をしても同じ事であり、植毛のドナーは後頭部より持ってくるため、生涯AGAに侵されるリスクは少ないが周囲の毛はAGAの進行とともに弱毛化し抜けて行く。つまり自毛植毛をしてフィナステリドかデュタステリドを内服しなければ植毛した毛のみが残る事になりうる。女性の男性型脱毛症(FAGA)は女性型脱毛の一部に認められ、前頭部から頭頂部にかけて全体的に薄くなる。女性にフィナステリドやデュタステリドを投与する事は禁忌となっている。

脱毛症の男性はヨーロッパで多く、東アジアや東南アジアでは少ないとされる。薄毛率が比較的低い東アジアでは、若ハゲは昔から軽蔑される風潮がある。近年はカツラ業界や育毛剤業界が盛んにテレビコマーシャルを流しており、若年性脱毛症を深刻な悩みの原因とする若い男性は多い。そのように人の劣等感を煽り立てて商売をするいわゆるコンプレックス産業のあり方を疑問視する声もある。

例えば、日本皮膚科学会では、「育毛を掲げたヘアサロンの行き過ぎた行為、発毛に関する誇大な広告、人工毛植毛によるトラブル。医療者向けにまずエビデンス(医学的根拠)を提供したいと考えた」として、男性型脱毛症診療ガイドラインを策定している。同委員の板見智・大阪大大学院教授によると、「対象とした成分や施術は科学的な検証材料があった。むしろこれに該当しなかった育毛剤や育毛サロンなどは科学的な根拠がないということ」などと指摘している。

wikipediaを引用

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